雪に閉ざされた終着駅の町。
短い昼が終わると、町にあふれるのは幽霊たち。
でも、ほんとうの幽霊じゃなくて、不死身の自分たちをそう呼んでみているだけだった。

幽霊の理想郷。誰かがそう言っていた。
「でもどうだろう、ただのごちゃまぜの町でしかないような気がするな」
彼女──小夜子は、そう思っていたけれど。

小夜子は町でたったひとりの異邦人。
新入りの、ちょっと不思議な女の子「ヨル」とルームシェア中。

小夜子は故郷に帰りたかった。
誰も超えたことのない、町を囲む雪の砂漠を越えて、あるかもわからない故郷へ。
忘れていた「大事なこと」を思い出したかった。
それが夢だった。

どこにも行けないこの町で、いろいろできないわたしは夢みる。