“きっと、私にとって、タバコは男と同義だ。
 ラベルは何でもいいから、手元になくちゃ寂しくて困る。”

大学生の桜田若葉(さくらだ・わかば)は、男癖の悪さで評判のヘビースモーカー。
ある日、いつものように立ち寄った喫煙所で、サークルの後輩・江向(えこう)に告白される。

「僕と付き合ってください。それから、タバコやめてください」
「いいよ。無理」
「ど、どっちなんですか」
「一文目はOKで、二文目はNGってこと」

愛煙家の彼女と、嫌煙家の彼。
煙草をめぐる、騒々しくも掛け替えのない日々のこと。
ゆらめく紫煙の晴れた先、彼が去ってからの年月のこと。

これは、彼女が彼を吸い終えるまでの、ささやかな恋物語。